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ドッグトレーナーのwan!ポイントアドバイス 子犬のしつけ: 2016年1月

飼い主の歩調に合わせて歩く練習をしよう!

ワクチンの接種が終われば、外に出て飼い主さんと一緒に
歩いて散歩をする機会が増えます。

しかし、散歩を始めたばかりの子犬にとって外の環境は
興味深いものばかりなので、飼い主さんを意識して
その歩調に合わせて歩くことは難しいです。

成長と共に落ち着いて歩けるようになる犬もいますが、
子犬の頃から「リードを引っ張る」、「拾い食いをする」
などといった行動を習慣化させてしまえば、特に大型犬など力の強い犬種では
成犬になってからの散歩が困難になり様々な問題に発展しかねません。

そのため、子犬の頃から飼い主の歩調に合わせて歩く練習はとても重要です!

①名前を呼ばれることに期待感を持つ練習をしよう!

散歩の際、飼い主さんの歩調に合わせて歩くように教えるためには、
様々な環境刺激よりも飼い主さんに対して期待感を持たせることが効果的です。

そのため、「名前を呼ばれることに期待感を持つ練習」を行うことで、
まずは飼い主に対して意識を高める練習を行うと良いでしょう!

②飼い主の動きに合わせる練習をしよう!

飼い主さんへの期待感が高まったら、次に飼い主さんの動きに
合わせる練習を行いましょう!

飼い主さんは子犬から一歩離れ、子犬が飼い主さんについてきたら
褒めながらご褒美を与えます。

このような練習を行うことで、子犬は飼い主さんの近くにいれば
ご褒美がもらえると学習し、飼い主さんの動きについてくるようになります。

練習を行う際は、一定の方向のみ離れるのではなく前後左右
様々な方向で練習をおこないましょう。

また、もし子犬がなかなか飼い主さんについてこないようであれば、
名前を呼んだり手に持ったご褒美を見せて
飼い主さんのもとへついてくるように誘導してみましょう。

③歩調を合わせて歩く練習をしよう!

飼い主さんの動きについてくるようになったら、
実際の散歩のように前に進み子犬がついてきたら
褒めながらご褒美を与える練習を行いましょう!

初めのうちは、一歩前に進み子犬がついてきたらご褒美を与えるようにし、
徐々に歩数を増やし子犬がついて来ることができる距離を伸ばしていきます。

④刺激の少ない場所で練習を行いましょう!

覚えていない行動を教える際には、成功回数を増やすことが
効率的な学習につながります。

特に子犬の頃は好奇心が旺盛なため、実際の散歩だけで
①~③の練習を行っても失敗する頻度が高く、なかなか学習が進みません。

そのため、まずは室内や家の敷地内などなるべく
刺激の少ないところで練習を続け、実際の散歩でも生かしていくようにしましょう。

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実際の散歩ではどうやって対応すればいいの?

散歩で様々な問題を予防するためには、
歩調を合わせる練習を継続しつつ適切な対応をすることも必要となります。
 
①リードは短く持つ

散歩中、自由に散歩させてあげたいという気持ちの表れとして、
子犬の行きたい方向に合わせて歩いてしまう飼い主さんは少なくありません。

しかし、子犬の自発的な行動に飼い主さんが合わせてばかりいると、
リードを引っ張って歩くことを学習させてしまったり、
飼い主さんの対応が間に合わず拾い食いや誤飲をさせてしまうこともあります。

そのため、子犬の頃からリードはある程度短く持ち、
子犬の行動をある程度制限することを習慣づける必要があります。

散歩①.jpg
リードは「J」の字を描く程度の長さを保って持ちましょう

②ハーネスの使用を検討する

多くの場合、首輪にリードを着用して犬を散歩させますが、
引っ張りが強い子犬などでは首が締まってしまい、
首輪を装着することを嫌がるようになってしまうこともあります。

そのため、横について歩くことを理解していない子犬に関しては、
ハーネスの着用を検討すると良いでしょう!

特に過度な嫌悪刺激や特殊技能を必要としない
「引っ張り防止用のハーネス」などを使用すれば、
飼い主さんも安心して散歩に行くことができます。

散歩②.jpg
引張り防止用のハーネス「ウォークインシンク」
リードを胸の部分で装着するため、物理的に引っ張ることができません!

③褒めながら散歩をしよう!
 
前述したように、リードを短く持って散歩をすると、
子犬は自らの意思で行動することに制限がかかるため
散歩中の楽しみが減ってしまいます。

そこで、歩調に合わせて歩く練習を実際の散歩中でも実践することで、
ご褒美をもらえることで子犬は喜んで飼い主さんと歩調を合わせて
散歩できるようになります。

初めは、1、2歩でも歩調に合わせることができたら
褒めてご褒美を与えるようにしましょう!

そのため、散歩中にご褒美を与える頻度が増えてしまうため、
朝や夕方に与える食事を半分程度持ち歩き、
一粒ずつご褒美として与えれば食事の過剰摂取を防ぐことができます。

④拾い食いした際の対処方法

子犬の頃は目新しいものをすぐに口に入れる傾向があるため、
散歩中、飲み込んでは危険なものを口に入れてしまうことがあります。

飼い主さんとしては、心配のあまり慌てて口の中から
取り出そうとしますが、無理やり取り出すことを繰り返してしまうと、
子犬は自分の所有しているものを守ろうとして
攻撃行動を示すようになってしまうことがあります。

緊急を要さない場合は、咥えたものは必ずご褒美と
交換して取り出すようにして、過度な警戒心を
持たせないように接する必要があります。
 
日本では、まだまだ散歩時のトレーニングが浸透しているとは言えず、
散歩中引っ張り続ける、他の犬や飼い主さん以外の人に
吠えかかるといった問題が良く見受けられます。

散歩は公共の場で行うため、犬を飼っていない人でも
安心して暮らせるようにするためにも、落ち着いた散歩ができるように
飼い主さん一人一人が子犬の頃からしつけをすることが、
犬とのより良い共生を目指すためには重要です!

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言葉への理解を深める練習

多くの飼い主さんは、愛犬との日常生活で
人の言葉を覚える能力の高さを実感しているのではないでしょうか?

2011年に行われた調査では、ボーダーコリーが3年間のトレーニングで
1022個ものおもちゃの名前を覚えたことが報告されています。
(Pilley et al., 2011)

もちろん、犬種や個体差の違いによってその差はありますが、
その言葉を覚える能力の高さこそが人とのコミュニケーションを深め、
他の動物よりも人との密接な関係を築いてきました。

しかし、ただ飼い主さんが何気なく犬に言葉を投げかけるだけでは、
犬は飼い主さんが意図する指示を正確には理解することはできず、
円滑なコミュニケーションを図ることはできません。

愛犬とのコミュニケーションを深めるためにもは、
飼い主さんが適切なコマンドトレーニングの方法を学ぶ必要があります。

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新しい行動を作り出す方法:反応形成

動物は特定の刺激に対して反応し、
その反応の結果として好ましい刺激(ご褒美)が与えられると、
再びその特定の刺激が提示された際に同じ反応を繰り返すようになります。

コマンドトレーニングとは、飼い主さんが提示するコマンド(特定の刺激)に対し、
犬が飼い主さんの望む反応を繰り返すように練習することですが、
犬が飼い主さんの望む反応を示さなければ、結果としてご褒美を与えることができず
その頻度を高めることができません。

そのため、犬に何かのコマンドを教える際には、
教えたい行動を引き出す刺激を用いなければなりません。
このように、目的の行動を引き出して新しい反応をつくりだすことを反応形成といいます。

反応形成には、作り出したい反応によって様々な方法がありますが、
「お座り」、「伏せ」などといった基本的なコマンドを教える際には、
ご褒美を使って目的の反応を誘導する「誘発法」が主に用いられます。

誘発法は、高度な技術を必要とせず比較的誰もが簡単に実施できるため、
飼い主さんがコマンドトレーニングを行う際には非常に有効な方法です。

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ご褒美を持った手についてくることを教える

誘発法を用いるためには、犬が飼い主さんの持っているご褒美についてこなければ、
目的の反応を作り出すことができません。

そのため、子犬の頃から飼い主さんが手に持っているご褒美を
追いかける練習をすると、誘発法による学習をスムーズに行うことができます。

また、食べ物を追いかけて食べる行為は、犬の持つ捕食行動を模倣し
本能的な欲求を持たすことができるため、誘発法を用いることで
コマンドトレーニングに対するモチベーションを高めることができます。

ご褒美の持ち方は、食べるときに犬の歯が手に当たらないように、
手のひらにご褒美を置き、親指で押さえながらあげた方が良いでしょう。

手に持ったご褒美を犬の鼻先に持っていき、手を動かしながら
犬が追いかけるように誘導し、犬が手についてきたら褒めながらご褒美を与えます。
 
名称未設定 1.jpg
※片方の手に持ったご褒美で犬が追いかけるように誘導し、
手についてきたら褒めながらご褒美を与えます。

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目的の行動を教える

ご褒美を持った手に犬がスムーズについてくるようになり、
飼い主さんが誘導の仕方を理解すれば、
目的の反応は簡単に作り出すことができます。

「お座り」の場合、手のひらに持ったご褒美を犬の鼻先に持っていき
ゆっくりと頭の上に持っていけば、犬はご褒美を追いかけながらお座りをします。

また、鼻先のご褒美を鼻先から前肢の方へ下げるように持っていけば
犬は伏せの体勢をとります。

目的の反応を示した際、褒めながらご褒美を与えれば、
誘導といった特定の刺激の提示によって目的の反応を
繰り返すように学習をします。

誘導による学習の成立を確認するためには、その成功率が
8割を超えるかどうかを目安にすると良いでしょう。
10回中8回成功することができれば、犬は誘導によって
目的の反応を示すことを学習したことになり、次のステップに進むことができます。

誘導によって目的の行動を教える際には、以下の点に気を付けながら練習を行いましょう。

  • 誘導する手の動きは、毎回、同じ動きを心掛けるようにする。
  • 誘導する手に犬がついてこられない場合は、犬の動きに合わせゆっくり誘導する。
  • 余計な刺激と反応が結びつかないように、なるべく手の誘導以外の動き(覗き込む、座るなど)はしないようにする。
  • 目的の反応を理解する(8割を超える)までは、言葉によるコマンド(座れ、伏せ)の言葉をかけない。
誘導1.jpg
 
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目的の行動と言葉でのコマンドを結び付ける

誘導によって目的の反応を示すようになった段階では、
反応を引き出すコマンドはあくまでも
「ご褒美を持った手による誘導」 です。

そのため、最終的に言葉によるコマンドで特定の
反応させたいのであれば、
「ご褒美を持った手による誘導」と「言葉によるコマンド」
を結び付けなければなりません。

多くの場合、犬が目的の反応を学習していないにもかかわらず、
言葉のコマンドによって反応を引き出そうとします。
誘導による成功率が8割を超える前に言葉のコマンドをかけてしまえば、
犬はどの反応と言葉を結び付ければ良いのかわからず混乱をきたしてしまいます。

はやる気持ちを抑え、まずは丁寧に誘導によって
特定の反応が示せるように根気よく練習する必要があります。

誘導と言葉によるコマンドを結び付けるには、

「言葉のコマンド→誘導→特定の反応→ご褒美」

の順で練習をします。

言葉のコマンドと誘導を同時に提示しても学習は成立しますが、
言葉のコマンドの後に誘導する方法より学習のスピードが遅くなってしまいます。
逆に、誘導の後に言葉のコマンドをかけて練習してしまうと、
誘導と言葉のコマンドは結びつきません。

 
renngou .jpg
「言葉のコマンド→誘導→特定の反応→ご褒美」を繰り返し練習したら、
言葉のコマンドを提示してから誘導するまでの時間を徐々に開けていきましょう。
すると、次第に言葉のコマンドと教えたい反応を結びつけるようになり、
言葉のコマンドだけで反応するようになります。
 
  • 言葉のサイン→(0.5秒)→ハンドサイン→教えたい行動(お座り)→ご褒美
  • 言葉のサイン→(1秒)→ハンドサイン→教えたい行動(お座り)→ご褒美
  • 言葉のサイン→(1.5秒)→ハンドサイン→教えたい行動(お座り)→ご褒美
  • 言葉のサイン→教えたい行動(お座り)→ご褒美
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